僕らの漫画道

■イントロダクション■

『いくらヒット作を描いても、次で打ち切りになったら終わりですから』
これは、ある有名な作家さんから頂いたお手紙に書かれていた一節です。

『次の作品楽しみにしています』
そう書いて出したファンレターに頂いた返信。
これは子供だった自分にとって大きな衝撃でした。

現在、漫画は日本が世界に誇る文化となり、
『漫画家』は憧れの職業ベスト５に入るようになりました。
『夢は必ず叶う！』
『簡単WEBデビュー！』
『誰でも漫画家になれる！』
『出張漫画編集部に気軽に持ち込み！』
『売れっ子漫画家になっちゃおう！』
メディアや出版社はそう謳い、
華やかな一面ばかりがクローズアップされるようになりつつあります。

ですが、本当の漫画の世界、本当の出版業界は、
今も昔も苦労と挫折の連続です。

作家さんからお手紙を頂いて、数年後――。
私は別の作家さんの作品に夢中になり、またファンレターの返信を頂きました。
ですが、それにもまた作家の苦悩や葛藤が刻まれていました。

そして、いつしか作家の本当の言葉を集めるのが
自分のライフワークとなり――気づけば、
大勢の作家さんから、様々な体験談を聞くようになりました。

そう、これは本当の漫画家――本当の出版のお話。
ゆるふわでキラキラしている、薄っぺらい夢みたいな漫画の世界とは無縁の
無骨で昔気質で不器用で、ただ漫画を愛する人達の物語。
そんな世界を届けたい一心で、10本の物語をまとめさせて頂きました。