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3.泡沫
帰り道。バスから見上げる空はとっくに暗くて、雲越しに月がグニャリと輝いている。
思った以上に大富豪になった。3万の予定が5万になった。
「定期、買い忘れちゃった」
あんなに欲しいもので溢れていたのに、すっかり忘れて帰路についてしまったのはきっと疲れのせいだ。
「ただいま」
上着も脱がずにベッドにダイブし、ベランダの窓越しに空を見上げる。
たったの3時間で5万円。きっと破格中の破格だろうに、割のいい仕事だとは到底思えなかった。
無意識でゲーム画面を開くが、いつもの楽しさが感じられない。
自分の髪の毛からホテルの匂いがすることに気付いた瞬間、飛び起きてバスルームに駆け込んだ。
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