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1.堕落
お金が無い。
何に使ったかは覚えていないけど、とにかくお金が無い。
具体的には来週切れる学校への定期代2万円弱が足りない。
今月の仕送りもかなり使い込んでしまったし、これでは定期の有効期限が切れたら大学へ行けない。すでに出席日数もヤバイし大至急欲しい。
何の取り柄も無い女子大生ができる日払いバイトは一日中働いたとしても日給1万円弱。冴えない奴らとバスに詰められて、工場の片隅でひたすらチラシを袋詰めする作業なんて二度とやりたくない。朝も早いし割に合わない。
もっと一撃でガツンと景気の良いバイトは無いものか…そんな甘い期待を胸に、昨夜道端に設置されていた“女の子のための高額アルバイト☆”と書かれた求人冊子を捲る。
「体験入店1万円・・・キャバクラでもそんなもんなのかぁ」
キャバクラでバイトをしている華やかな同期を思い浮かべて、顔面偏差値もスタイルも自分とは違いすぎる現実に打ちのめされた。
「キャバクラは無理!!1日で3万くらい稼げるのは・・・風俗くらいしか無いのか」
風俗店でどんなことをやるのかは、大学生ともなれば容易に想像がつく。もしも自分の父親くらいの年齢の男が来た時に、嫌な顔しないで悦ばせるなんて生理的な意味でちょっと自信がない。なんとか自分で客を選ぶことはできないのか。
「空からお金が降ってこないかなー」
都合の良い妄想を口にしながらベッドにダイブし、ベランダの窓越しに空を見上げる。絵に描いたようなビューティフルサンデー、見事な秋晴れ。
「ハァ~、ゲームの中ではこんなにお金持ちなのに・・・」
ゴロゴロしながら癖でこなすスマホゲームのクエスト周回は、あっという間にスタミナ切れとなる。私の悪い癖で、レポートも着手せずバイトも探しただけで働いた気になってそのままの姿勢でネットサーフィンに移行する。
(悪い癖とわかっていることと、改善するかは全く別の問題だ)
「・・・ん???」
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