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その話を聞いた後、ロバートはあるモリーナの前で足を止めた。そしてじっとそのモリーナの顔を見た。
「あまり表情の豊かでないモリーナですね。」
アイがこう呟くと、モリーナは優しい声で言った。
「いや、このモリーナは苦労人だよ。笑ったらきっと優しい笑みを浮かべる方なのだろう。
推定年齢は三二〇歳、モリーナの中ではまだ若いのに随分と色々な経験をしているようだ。」
「苦労人ですか。私には無表情でどこにでもいるモリーナにしか見えませんが。」
「ほら目元を見てみてよ。優しさが滲み出ている。それに頬辺りの皺の感じというかなんといか。とにかく苦労人という感じがしないか。」
「そうでしょうか。確かにモリーナは成長とともに表情を変えると言われています。楽しい音楽とともに、大事に育てられたモリーナは笑顔でいることが多いとか。
しかしこのモリーナから苦労人だとか優しいとかは私にはどうしても感じることが―。」
「そうだね。そこまで表情豊かではないだろう。例えばあそこにいるモリーナは睨んでいて怒っているという感じが簡単に分かる。
でも、僕はそれだけでそのモリーナを語ることはできないような気がする。その奥にある人生や経験を見てどうしてその表情なのかを見ると面白い。」
アイは少し首をかしげながら「そういうものなのでしょうか」と言った。
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