私を見つけて

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3年ぶりの千葉は、少し肌寒かった。 季節は、冬から春に移り変わり始めようとしている。 やっとユリに会える。 昨夜は、興奮して眠れなかった。 まるで、遠足前夜の小学生のようだ。 あれから俺は成長した。 大賞をとってから仕事が舞い込んできた。 やっと飯が食える生活にまでなったんだ。 ユリを忘れた日など1日もない。 早くユリに会いたい。 流行る気持ちを押さえ、足早に待ち合わせ場所まで歩いて行った。 3年前より幾分大きくなった桜の木が、俺を出迎える。 「待たせたな」 桜に触れ、語りかける。 辺りを見渡したが、ユリはまだ来ていないようだった。 「気のせいか・・・」 何だかユリが近くにいるような気がした。 それから数時間待ったが、ユリは来なかった。 忘れている? いや、ユリに限って考えられない。 仕事が忙しいか? それはあり得るな。もう少し待つか・・・ やがて、あたりは暗くなり夜を迎えた。 なぜ来ない、ユリ。 俺は何度も連絡をしようと思った。 だが、それは違うと思い何度も立ち止まった。 ユリに何かあったのか? それとも、俺は見限られたのか? 思えば、俺の身勝手な提案だったのかも知れないな。 お前の事を想っての3年間だったんだが、結局1人本意な考えだよな。 ごめんよ、ユリ。 実は今日お前にプロポーズをしようと思ってたんだ。 今の俺には高価な指輪は買えない。 だから、精一杯の気持ちを込めて作ったこの夫婦茶碗をお前に渡したかったんだ。 「これからずっと側にいてくれないか」って。 お前がマイホームを設計して建てた家で、この茶碗を使って一緒に食事をする日を夢みていたんだ。 それで、俺がお前に会えなくて寂しくなって書いた、この手紙を笑って読んでくれる様に持ってきたんだ。 ほら、何百枚ってあるだろ? 俺はこんなに寂しかったんだよって。 俺はこんなにお前を愛しているんだよ。 お前に伝えたかったのに・・・ ユリ、何か来れない理由があったんだよな。 近くにいるんだろ? 何だかそんな気がするんだ。 明日でも明後日でも、俺はずっとここでお前を待ってる。 お前が来れないなら、俺が会いに行く! ユリ、お前に会いたい。 会いたいんだ、ユリ!!!
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