新幹線

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 少女の肩を叩く。ゆっくりと少女は振り向いた。 「これ、あげるよ」  僕はオレンジジュースを少女に差しだした。 「いいんですか?」  僕が自分の分のオレンジジュースに口をつけると、彼女もおずおずとキャップを開いた。あまりおいしくない。ラベルには果汁二十五パーセントの文字。残りの七十五パーセントは一体なんだろう。 「おいしいです」  少女はにこりと笑った。改めて、僕は少女を見る。どうしても少女の年齢が分からない。見ようによっては、十代にも、二十代にだって見える。もしかしたらそれ以下かもしれない。そんなふわふわとしたアンバラ ンスさを、彼女は持っていた。 「あの、おいくつですか?」  言ってしまって後悔した。背中から脂汗が吹き出る。よくよく考えたら、いや考えなくても、初対面の女性に歳を聞くは、これ以上ないほど失礼だということを、僕は失念していた。 「十九歳です」  あわあわする僕とは対照的に、少女は何でもないと言った風に答えた。十九歳。つまり、大学生。思わずえっ。と、声が出た。 「気にしないで、ください。よく、間違われます」  照れたように少女は頭を掻いた。そして続けて、 「あなたは?」  と聞いた。 「十八です」  答えると、少は目を丸くした。 「本当?」     
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