船幽霊

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海の近くに住む者は,幼いころから悪さをすると船幽霊がやってきて連れて行かれるだの,お盆や正月に海に入ると船幽霊が現れて海に引きずり込まれるだのと,散々聞かされて育ってきた。そのほとんどが(しつけ)の一環としてどの家庭でも使われていて,ある程度成長した者は誰も船幽霊など信じていなかった。 「馬鹿じゃねぇの……船幽霊なんている訳ねぇじゃん……」 敦が強がってみせたが説得力はなかった。裕二も修一も黙ったまま,どうすればよいのかわからず,ボートのなかで身を隠すようにしてジッとした。 「さっきさ……サーファーの人が俺たちに声を掛けてきたじゃん……。あと,仁が岸にいるから,どっちかが警察か海上保安庁に連絡いれてくれてる可能性大だと思うんだよ……」 「ああ……仁は馬鹿だからなんもしてないと思うけど,さっきのサーファーの人は焦ってる感じしたもんな……」 敦は2人の言葉にほんの少しだけ期待をした。 「じゃあ,どうする…。裕二,修一,俺たちはこのまま動かないほうがいいかな……?」 「動きようがないだろ……オールが無くなってるし……」 修一に言われて気が付いたが,ボートの中には自分たち以外なにも残っていなかった。 「マジかよ……」
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