船幽霊

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しばらくボートの中で身を隠すようにしていると,ゆらゆらとボートが左右に揺れ始めた。3人はお互い目で自分たちはなにもしていないことを確認し,ボートの揺れに合わせて身体の位置を動かした。 ボートの外でパシャパシャと波の音が聞こえたが,波が立っているような感じはなかった。裕二は体勢を整えると,声を出さないように注意しながら,静かにボートから顔を出してみた。ゆっくり海面が見えるところまで顔を上げると,ボートの周りに真っ白いうねうねした何かが大量に纏わりつき,霧のなかで真っ白な海面のようになっていた。 「たぶん……ヤバイ……」 ボートの中で敦と修一に状況を説明すると,2人の表情が恐怖と不安で歪んでいた。 「なぁ……海の中にいる白いうねうねしたやつ……案外,害はないんじゃね……? もう随分時間が経ってるけど…別になにもしてこないし…生物だとしたら,さすがに俺たちに気付いてないとか…そんなのはあり得ないだろうし……」 「いやいやいや…裕二,それはどうかと思うぞ。もし船幽霊だとしたら,うちら,海に引きずり込まれるし……」 「でもさぁ……。こんなに反応がないって,もしかして俺らが知らないだけの海の不思議な現象かも知れないじゃん。漁師さんの間では有名な話かも知れないし……」 裕二の言うことに敦も修一も急に納得した。確かに海の不思議な現象は数えきれないほどあり,自分たちが知らないことのほうが多かった。白いうねうねしたものも海藻かも知れないし,こういったものが海の中に大量に発生することがあるかも知れないと納得した。 3人はゆっくりと身体を起こすと,ボートの周りを見回した。 白いうねうねしたものはボートを取り囲み,グニャグニャと形を変えながら激しく動き続けた。
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