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必死にボートから掻き出していたが,白いうねうねの勢いは増すばかりで3人の体力はどんどん失われていった。
裕二が白いうねうねに脚を取られたかと思うと,身体に巻き付いてギリギリと締め上げてきた。それは意思があってそうしているのではなく,激しい流れのなかで裕二を障害物のように扱う程度のものだった。裕二は白いうねうねに呑み込まれると,ボートの中にいるのはわかったが頭まで見えなくなった。
慌てて修一が裕二を起こそうとしたが,その時裕二の身体はすでに圧迫によって完全に押しつぶされていた。不思議なことに血も肉も見当たらず,白いうねうねに吸収されたかのように思えた。
「ヤバイ! 裕二が見当たらない! 消えた!」
修一の絶叫とともに敦が振り返ると,その一瞬で修一の身体が白いうねうねに巻きつかれ海へと運ばれていった。
「クソ! なんなんだよ! どうなってんだよ!」
白いうねうねはさらに激しさを増し,敦の身体を締め上げるようにして海へと引きずり込んだ。
白いうねうねが激しく海を波立たせ,津波のように沖へ沖へと移動していくと,海は穏やかになり雲の隙間から陽が射してきた。
霧が晴れると,海上保安庁の巡視艇とヘリコプターが海岸線から沖にかけて行ったり来たりした。地元の漁師たちも捜索に協力したが3人の乗ったボートは見つかることはなかった。
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