船幽霊

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その後,仁は何度も警察に呼ばれ,3人がどうして海に出たのか,なぜ仁だけ岸に残ったのか繰り返し説明した。学校でも3人が海に出たことで担任の教師と,ボート部が競技用のボートの管理をしっかりと行っていなかったことが問題となり顧問の教師が責任をとらなくてはならなかった。 それから月命日になると,沖のほうから3本の白い筋のようなものが岸近くまでやってきて人の足に絡みつくことが噂されるようになった。 仁はその噂を確かめたくて,月命日になると波打ち際に立って沖を眺めていた。そしてある日,白い筋はまるで意思があるかのように仁のほうへ寄ってくると,生物のように足に纏わりついた。仁は噂は本当だったのかと怖くなったが,海から白い筋を掬い上げると溶けるように消えてなくなった。 沖から現れる白い筋のようなものを見たのは,仁にとってそれが最初で最後だった。 それ以来,再び船幽霊の話は各家庭で躾に頻繁に使われるようになり,いつの間にか幽霊船には敦,裕二,修一の3人が乗っていて,悪さをすると3人に海の底に連れて行かれると話が変わっていった。 一部,メディアでも3人の海難事故が取り上げられたが,なぜか時間と共に「海に帰った少年」のような扱いになり,少年を想う歌が詠まれたり,海に消えた少年たちの友情物語として美談のように語られるようになった。 また,この海で獲れる魚の一部に3本の白い線が度々入っていることがあり,3本線の入った魚は海に帰すのが漁師の間で暗黙の了解となった。 学校では3人の鎮霊碑を海に面した場所に建てて,今後生徒達が海の事故に遭わないように毎月3人の命日とされる日には花とお線香が欠かさず供えられた。
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