船幽霊

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ボートが海岸線と平行になったかと思うと,急に船首が勢いよく沖を向いた。突然90°に近い転回をしたことで,オールの代わりに持ってきた板を海に落とす者もいた。 そして,ボートがまるで激流下りでもするかのように海の上を勢いよく沖に飛び出していった。 「やべぇ! 潮に乗った!」 「マジか! 速ぇぇぇぇ!」 それを見ていたサーファーの1人が大声で叫んだ。 「おおいお前ら,何やってるんだ! お前らボート部じゃねぇだろ! 素人が遊び半分で危ないだろ!」 3人の耳にサーファーの声は届いていたが,それどころではなかった。必死にボートにしがみ付き,潮の流れに乗って高速で沖に突き進むボートから振り落とされないように踏ん張っていた。 サーファーは3人の様子を見ていたので,警察に連絡するために急いで岸に戻ろうとした。 「やべぇぞ! めっちゃ速ぇぇぞ!」 敦が踏ん張りながら,2人がちゃんとボートに乗っているか確認した。裕二も修一も青ざめた顔で必死にボートにしがみ付いていた。 しがみ付く3人を波しぶきが激しく襲った。海水が風で巻き上げられ,シャワーのように容赦なく3人を濡らした。そして冷たい風は,びしょ濡れになった3人から急激に体温を奪っていった。
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