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「敦,修一! なんだよ! 急に叫ぶなよ! ビビるだろ!」
敦と修一が怯えた様子で裕二を見た。そしてできるだけボートから身体が出ないようにして,恐る恐るボートの外を指差した。
「なんだよ! マジで怖えぇから,やめろよ!」
「海面を見てみろよ…裕二…。静かにな……静かに……」
裕二が恐る恐るボートから海面を覗き込むように顔を出すと,海の中いっぱいに真っ白な人間のような生き物がゆらゆらと泳いでいた。その姿は人間のシルエットのようだったが,真っ白で手足が異常に長く見えた。そしてどっちがお腹でどっちが背中かわからないほど,白くゆらゆらしていた。
「なに……あれ………?」
裕二が敦と修一の2人を見たが,2人ともなにも言えずにボートの中で身を隠すように小さくなっていた。
「裕二………。どれくらいいる………?」
「え……? 数………?」
裕二は再び覗き込むように海の中を見た。そしてゆっくりと顔をボートに戻すと,敦と修一を見てぽつりとつぶやいた。
「1,000はいると思う………」
「なにかわかった………?」
「クラゲじゃないことは確かだ…。でも…人間でもないと思う……」
「敦,裕二,もしかしてさぁ……これって,船幽霊ってやつじゃね……」
2人は思っていても口に出さなかったことを言われ,胃が締め付けられた。
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