1人が本棚に入れています
本棚に追加
「椿、好きだよ」
「……分かってる」
この言葉が口から出たときに、私は完全に椿になっていた。好きだよ、なんて言われたらいつも「嬉しい、私も」って返すのに。ドアが閉まるこの瞬間まで、私は「椿」だったのかもしれない。
「お前、何考えてんだよ」
「わ、分からないけど……怖かったぁ」
ホッとして座り込んだ。椿を演じきれた。それができたのは、きっと妹のどこかの部分を食べてしまったからだろう。
「……もうドアチェーン外すなよ」
そう言って彼は料理を始めた。今日も何かが出来上がって、私たち二人で椿を囲むのだ。
最初のコメントを投稿しよう!