椿と私と彼は

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それには私と妹は、「母親が違う」ということが大きく関係していた。私の顔は成長すればするほど産みの母親に顔が似ていった。高校生になる頃には、唯一持っていた母の写真とそっくりな顔になっていた。昔、夫が愛した女の娘。顔を見るたび怪訝そうな顔をする母親。それに気付いた時、ここに私の居場所はないのだと思った。 グレた姉と優秀な妹。お互いを嫌っていたが、声と背格好だけは似ていた。私が黒髪の時の後ろ姿は、妹の同級生からよく間違えて「つばきちゃん」と声を掛けられた。電話では、椿に間違えられては舌打ちされた。そのたびに妹は私の人生を邪魔してくるいらない人間だと思った。 最悪だったのは彼氏の横取りだった。惨めだったのは高校で二年付き合った同級生に振られ、その後妹の彼氏になっていた時だ。泣いて問い詰めたときに、当時中学生の妹はさも普通のことのように言った。 「付き合って、って言われたから。それだけ」  もちろん私の元カレだということは知っている。あの目、忘れられない。「お姉ちゃんのその気持ちわかんないや、私は選ばれ続ける人間だから。あーあ、可哀想」という哀れみを含んだ目。それとは裏腹に上がった口角。突き落とされたようで、冷めた怒りがこみ上げた。 「あんた、ほんと」 「私に突っかかる前にさ、そんな簡単に振られる前に羽交い絞めでもして捕まえときなよ」     
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