三日目の核心

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不覚にもドキドキさせられた。求めてきた言葉が彼の口からはいくらでも出でくるのだ。 「……妹の肉なんて食べたら牡丹の味が分からなくなるじゃないか」  素早く立ち上がり、床に押さえつけられた。甘い言葉に騙され、油断した。動こうにも力が強すぎる。 「あってるよ、おおよそはね」 「どういうこと」 「え―ここまで来たら察してよ」  ニコニコと笑ったまま、私に向かい話す。 「牡丹のことが食べたいの」 「……私のことを」 「あ、初めは普通に好きだったんだけどね? でもなんか美味しそうに見えちゃって、抑えきれなかっていうか」  頭のおかしいことを平然と話す。何を言っているの? 「でも殺したと思ったら違う人だし、見られちゃうし。仕方ないから間違って殺しちゃったみたいな雰囲気にしないとさ」  彼の表情が影になる。 「牡丹のこと食べれないじゃんか」  それはまだ、諦めてないということだ。いや、私は今から……。 「大丈夫。痛い思いはさせないから安心して死んでね。人肉が美味しいっていうのも妹さんを通じて分かったしね?」 「私、タバコ吸ってるしさ……あんまり美味しくないと思うし」 「何言ってんの。好きな人の肉が一番美味しいに決まってるじゃんか」  嬉しい言葉だった。この人は妹を選ばない。今までの劣等感が消えた。危機的状況だからだろうか、殺されるのに、目の前の人が好きだ、という感情しか私にはなかった。この人になら殺されてもいい。 「妹さんはだいぶ苦しんでたから楽に死なせてあげるよ」  首に拳が入る。強い衝撃に意識が遠のく。ただ、そんなところも優しいな、なんて気でも違っている。 「牡丹、愛してるよ」 「ッわ、たし……も」  好きな人に殺されるならきっと幸せだ。最後まで彼の温もりを感じ、彼の笑顔を焼き付けて、そっと目を閉じた。
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