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振り返ると白タイツに腹巻きで髭ずらの男が立っていた。手を腹巻きに突っ込んだまま下駄をカラカラいわせて近づいてくる。
「へへ、おまえが噂のエメラルダスくんか。いい面構えしてんじゃねぇか、なあ多恵子」
「とおちゃん!」
男は少し間を取ってから、この時の為に準備していた口上を述べた。
「おうおうおう、にーちゃんよ。うちの娘と付き合おうってつもりなら、せめてサンマの三枚おろしくらい練習しとかないとな!」
海の男のその顔は、太陽を浴びてさんさんと輝いていた。
「親方、よろしくお願いします!」
「エメラルダスくん!」
こうして二人は同じ船を漕ぎ出した。二人の門出を漁師仲間達の大漁旗がいつまでもいつまでも見送っていた。
「とーれとーれぴーちぴーちかにりょうり~とくりゃ。へへ、へーっくしょん!」
完
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