1人が本棚に入れています
本棚に追加
ドシンッ
「いてててて」
「大丈夫?」
釣り竿を持った女の子があわてて駆け寄ってきた。
「あっ君は同じクラスの・・・・・・、ええっと誰だっけ?」
「ふふ、私は大海原(おおうなばら)多恵子だよ。地味だから知らないよね」彼女は眼鏡をクイッと上げて言った。
そうだ、この女の子の名前は大海原多恵子。漁師居酒屋『俺の海』の一人娘で、学校で見かける彼女はいつも魚のような生臭い匂いをさせている。匂いは家の手伝いをしているからなんだけど、その匂いを気にしてか引っ込み思案でオドオドしていて、休み時間は教室の隅で隠れて本を読んでいるような地味で目立たない女の子だった。
「その大海原さん、なんで君が助けてくれたの?」
僕は辺りを見回した。どうやらビルの屋上のようだ。
「違うよエメラルダスくん。私はエメラルダスくんを助けたんじゃ無い。私もみんなと一緒なんだ。エメラルダスくんにチョコを渡そうと思ったの」
「え、チョコ! 嫌だ、よせ、あっちに行け」
僕は力の限り暴れた。
「無駄だよエメラルダスくん。その糸、グラスファイバー製の巨大魚用だから人間の力じゃ絶対に切れない」
大海原さんは懐から小さな箱を取り出して蓋を開けた。
「うわーーーーーー」
最初のコメントを投稿しよう!