うわさ

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機動隊の装甲車が人々を割って乗り込んできた。「静粛にしなさい、静粛にしなさい」とスピーカーで何回か警告した後、装甲車は放水を始めた。  壁や電柱に登ろうとした者は放水にとばされた。  群衆は装甲車に向かい、装甲車のドアはバールのようなものでこじあけられ、警察官が引きずり出され、群衆は暴行を加えた。  人々の顔は、笑顔に満ち、実に清々しくも見えた。  ガソリンでも被せられたのだろう、装甲車に火がつけられた。どっと人々は爆笑した。  いったい何がどうしたというのか。人々の怒りはもはや別のところに向かっているかのようだった……  暴動はやがて鎮圧されていった。  これも信じられないぐらいあっけないことだった。 町内にはゴミの山が残った。 朝、町内の人たちが掃除を始めていた。出勤前のサラリーマンはスーツを脱ぎ、群衆がどこからか運んできあソフアーや家具な自転車やバイクなどを使ったバリケードを片付けていた。 あれだけ多くいたけが人はどこに行ったのか。あたりには水がまかれデッキブラシできれいになっていた。  僕は、いまさら出て行くのが気まずかった。  朝食ができたのを妻が伝えた。こどもたちはテーブルに着いていた。  出勤するとき、隣の夫人が明るく「おはようございます」とあいさつをしてきた。  道ばたには昨晩のロケット花火が何本も落ちていた。     
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