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「おかーりー」
アキラはスナック菓子を四枚ほどまとめて口に頬張りながら菫を迎えた。
「ただいま」
アキラが家にいて、ほっとする。こんなシーソーゲーム、もうまっぴらなのに……。屈託のないアキラの笑顔を見ると、嬉しいんだ。
隣には座らなかった。
サッと夕食を作って、バレンタインなどなかったように、適当な会話をして、もちろん笑ったりもして、バレンタインデーは24時を過ぎ、過去となった。
二人で布団に潜る。足と腕にアキラの体温を感じた。唇を合わせることもしなかった。求められても、しないつもりだった。
小さな接点でアキラの体温を吸収するうちに、アキラの小さな寝息が立ちはじめた。そっと、サイドテーブルからリモコンを取り、静かに照明を消した。これで良いと思った。
朝を迎えたら、並んで買ってきたパンを一緒に食べよう。食べ終わったら、おしまいにしようと告げよう。
「おやすみね」
菫は勝手気ままでかわいい猫にそっと囁き、自分も目を閉じた。
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