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「俺さ、朝はご飯じゃなくてパンが良いんだよね」
1個500円もするパンをふた口ほどで飲み込んでいる。菫は隣で一緒に食べるのが辛くて、キッチンに逃げ込んでいた。平静を装おうと、洗い物をしてごまかしていた。
「何それ。たまーにわざわざ和定食作ってあげてるのに、お気に召さずだったの?」
「んーん、あれはあれで正解。でも、パンってサクッと食えて、それでいて美味いしさ。何せ無限に色んな種類あんじゃん」
カフェオレを嬉しそうに啜っては、まぶたが痒いのか、時折爪を立ててまぶたを擦っている。
「ふふ、浮気病のアキラらしい感想だこと」
そう言うと、アキラはけたけたと笑った。
「でもさ、パンだったら、菫が楽になんじゃん。いつかさ、歳とったら腰が痛くなったりして動けなくなったりさ。そん時にパンをぽんって出すだけで済んだらさ、楽じゃん」
何を言い出すのやら……。何歳までそのまんまで私の横に居座るつもりだ。なんて思って、口をつこうとしたところで、菫はその言葉を飲み込んだ。
ふと、キッチンをよく見ると、気付いてしまったのだ。
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