2.小さな未来

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「俺さ、朝はご飯じゃなくてパンが良いんだよね」  1個500円もするパンをふた口ほどで飲み込んでいる。菫は隣で一緒に食べるのが辛くて、キッチンに逃げ込んでいた。平静を装おうと、洗い物をしてごまかしていた。 「何それ。たまーにわざわざ和定食作ってあげてるのに、お気に召さずだったの?」 「んーん、あれはあれで正解。でも、パンってサクッと食えて、それでいて美味いしさ。何せ無限に色んな種類あんじゃん」  カフェオレを嬉しそうに啜っては、まぶたが痒いのか、時折爪を立ててまぶたを擦っている。 「ふふ、浮気病のアキラらしい感想だこと」  そう言うと、アキラはけたけたと笑った。 「でもさ、パンだったら、菫が楽になんじゃん。いつかさ、歳とったら腰が痛くなったりして動けなくなったりさ。そん時にパンをぽんって出すだけで済んだらさ、楽じゃん」  何を言い出すのやら……。何歳までそのまんまで私の横に居座るつもりだ。なんて思って、口をつこうとしたところで、菫はその言葉を飲み込んだ。  ふと、キッチンをよく見ると、気付いてしまったのだ。
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