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コンロの五徳に油汚れがついていない。キッチンの隅にこびりついていた汚れも無くなっている。
ちらりとアキラを見る。アキラは鼻唄を歌いながら、ラーメン屋さんの特集をしているTVに釘付けだった。
辺りを見回すと、廊下も部屋の床も、塵ひとつ落ちてない。
猫は自分のテリトリーだけは綺麗に舐めあげる。そんなとこだろうか。だが、それはアキラにとっては、ここが自分のテリトリーということだろうか。いや、アキラは猫ではないのだが。
「あのさ、俺、最近ね、塩ラーメンの奥深さに気付いた。今度、ここ行こうよ」
嬉しそうにTV画面を指差している。菫は身体を傾けて、画面を覗きこんだ。
「……うん」
「あとさ、このパンめっちゃ美味い! 明日もこれがいい、俺!」
「そのパンすっごい人気で何十分も並んで買ったの。そんなに毎日無理だよ。高いし」
アキラは残念そうな顔をして、最後の一切れ噛りついた。
「そっか、じゃあ俺が買いに行く。お金は何とかなる。将来的にね! 俺、実はさ、これ……やり始めたんだ」
アキラは鞄からどっさりと参考書らしいものを取り出し、テーブルに置いた。
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