1.列

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 菫はいつもと代わり映えしないパスタを選び、レジに並んだ。ふと、パスタの上にチョコが置かれた。 「これ、お礼っす」  にこにこと、この上なく嬉しそうな表情を浮かべている。 「いやいや、そんなの」 「チョコはストレス軽減するんすよ? 雨の日に最適すよ」  聞く耳を持たなそうなアキラの笑顔に降参して、そっとチョコを鞄にしまった。  僅かな幅しかないコンビニの屋根に身を屈めて、アキラは菫を待っていた。 「ごめんね、お待たせ。傘差しててくれて良かったのに」 「どの傘なのか忘れちゃったから」 「そっか、じゃ、帰ろうか」  菫は赤い傘を手にとって、半分ずつ入るように差し、人目を気にしながらどしゃ降りを歩いた。  アスファルトのほとんどが水溜まりになっている。信号待ちをしていると、突然アキラは傘を抜けてどしゃ降りの雨に飛び出した。電信柱の横でしゃがみこみ、雨に打たれながら振り返った。 「ねえねえ、これ、スミレじゃない?」  アキラが指を差した電信柱の根元に、小さな薄紫色の小さな花が咲いていた。 「それはニワゼキショウだよ? 濡れるから入って」  信号待ちをしている人たちが怪訝の目を向けていた。それでも、雨に打たれながらニワゼキショウを摘んで喜んでいるアキラに、菫は何だか心を暖められた気がした。
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