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あれ……。
やっと列が外から百貨店の中へ進み、凍える寒さから解放されたものの、列が進むにつれて、菫は不安を覚えていた。
左右に伸びた列は次々と手前の有名なスイーツ屋さんに行き着いている。この列はよく見ると、もっと奥へと続いているようだ。
ようやくこの列がチョコの列じゃないと分かった時にはもう遅かった。続いている列の先にはベーカリーの看板が出ている。今更並び直すのはさすがに時間が惜しい。こんな日に紛らわしい、と列の後ろを振り返ると、お店の人がきちんと『この列はクローバーベーカリーの列です。チョコレートではありません』と書かれた看板を持っていた。
「もう、いいか……」
菫はぽつりと呟いた。
これがひとつの啓示なのかもしれない。もうチョコは買わない。パンを買ってアキラのお腹を満たしてあげて、それでおしまいにしよう。
この列が教えてくれたのだ。この恋は終わりにしておきなさい、と。
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