最後の晩餐。

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 *** 「みんな、見てくれ!凄いご馳走を見つけてきたぞ!!」  翌日。  半日以上、町に出て獲物を探していた俺が見つけたのは。大きな大きなチョコレート、だった。あのヨソ者達がしまい忘れていったのか。甘くていい匂いのするそれが、栄養満点で本当に美味しいことを自分達は長年の経験で知っていた。 「すっごーい、チョコレートだ!」  子供達は皿いっぱいに盛り付けられたチョコレートに、嬉しそうに齧り付いた。妻は少し心配そうに俺を見る。 「貴方、凄いわ。凄いけど……こんなに私達だけで持ってきてしまって大丈夫だったの?」 「ん?」 「だって、私達以外にも家族はたくさんいるでしょう?申し訳ないわ、私達ばかりいい思いをしては」  本当に心優しい妻だ。自分達が飢えるかもしれないという時にであっても他人を気づかうことを忘れない。俺が惚れたのはそういう女性だ。なんだか誇らしい気持ちになってくる。 「心配ない。他の家族の家長も見つけていたんだが、俺達全員がありったけ持ち出しても運びきれないくらいの量があったんだ。というか、まだまだ残っていたはずだぞ。あのヨソ者どもが、いつもあんなにたくさんの美味しいチョコレートを食べているかと思うと忌々しいけどな」 「そうね。……そんなにいっぱいご飯があるなら、私達にも分けてくれればいいのにね」 「そうだな。くそ、肌の色が違うからってか?それとも俺たちが小さいからか?みんなをこんな場所に追いやりやがって。俺達が何をしたっていうんだ。なんでこんなに憎まれなきゃなんねーんだよ、ったく」  まあ、そんな愚痴を言うのはよそう。子供達がご馳走を楽しんでいるのだ。水を差すような真似はしたくない。 「ほらほら、もっと食べていいぞー!まだまだあるからなー!」  子供達にやっても、全然余裕がある。俺と妻も食卓について、栄養満点のご馳走にありつくことにした。一口齧った瞬間、口の中に広がるとろけるような味がたまらない。――ああ、やっぱりチョコレートは、最高だ。
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