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名字カースト戦争
高校二年生になった新学期、学校はなんだか全体が浮かれていて、僕――白川拓真もどことなく浮き足立っていた。表で確認した自分のクラスに向かうと、大半は知らない顔で、その中にパラパラと、昨年同じクラスだった面子がいる。
「よお」
「おー、よろしくなー」
声を掛け合いつつ、自分の席へ向かう。右から三列目の前から三番目。悪くない位置だ。最初から妙な目立ち方をすることはないだろう。鞄を下ろし、椅子を引く。その時声をかけてきたそいつ――小林くんが、その後の僕の一年を小さく揺るがすことになろうとは、その時は知る由もなかった。
***
「白川……いい名字だね」
前の席に先に着いて座っていた男子が握手を求めてきたので、僕はそのまま手を握り返した。
「いい名字? よくわからないけど、ありがとう」
彼は切れ長気味の目にキリッと整えられた眉で、全体的にしゅっとした印象だった。僕よりも少し背も高そうだ。小動物みたいな扱いを受けることの多い僕からすると、ちょっとだけ羨ましい人種に思えた。だが、続いた彼の言葉は僕の予想を裏切るものだった。
「やっぱり、温室で育つと、その価値に無自覚になるものなんだな」
「え?」
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