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「奴らは画数が多い。田中や小林よりも幾分かかっこいい側だ」
「へえ、そういうもの?」
「漢字ひとつで印象は随分変わるんだぞ。『田中』よりも『森田』が、それよりさらに『藤田』がかっこいいだろ。同じ田を使っていてもこんなに違うんだ。田中と中田を隔てるものは数の違いとバランスだ」
「はあ」
言わんとしていることはわからなくもないが、ついつい気の抜けた声になる。すると小林くんはきっと僕に強い視線を向けた。
「白川くん。もし君が漫画を描くとする。アイドル漫画だ。そこでアイドルグループのキャラクターに名前をつけるとして……『田中』や『小林』にするか?」
「しな、い」
「それが答えだ。俺たちはモブ名字なんだ」
「モブ名字」
「カースト最下層だ」
いつの間にか少し納得させられていた。
「でも、僕も白川で、画数は多くないよ」
「君の勝因は、漢字が意味を持つことだよ」
これって国語の授業だっけ?
僕はクラクラしてきた。
「白、という感じはすごい効果なんだ。白川、白浜、白鳥……。何をとっても美しい響きになりうる。君は選ばれた存在だよ」
「選ばれた存在」
ライトノベルのような言葉が出てきた。
「そうだ」
ふん、と小林くんは鼻を鳴らした。
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