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「でも、どうするよ? いくつか気にいる名字の子に声をかけるのか?」
鈴木くんが話を進める。小林くんはふるふると首を振った。
「同時に複数の女子に声をかけるのは、さすがによくない。十八歳になるまでに時間はあるし、一人ずつ、トライすることにする」
変なところで真面目だ。いや、全てにおいて小林くんは大真面目なのだった。
「まずは、来週のオリエンテーションだ」
クラス単位で行動する遠足のようなものが来週に迫っていた。
「そこで、神通さんと仲良くなるぞ」
「『神通』が理想なの?」
「平凡でなく、かぶることもない。今まで出会ったことないだろう? それに、かっこいい」
確かに見たことがないし、神があるだけでかっこいい気がする。
僕は左側の列にいる神通さんをちらりと盗み見た。今のところ、こちらに気づいている様子はない。セミロングの髪にゆるりとウェーブをかけた髪の、オーケストラ部の子だった。まだ中身はよく知らない。きっと小林くんも知らないはずだった。僕は途端にオリエンテーションが不安に思えてきた。
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