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オリエンテーションは鎌倉散策で、大抵の時間がグループ行動だった。小林くんは僕と鈴木くんを巻き込みつつ、きっちりと神通さんを誘ってきた。
「神通さん、君と一緒に回りたい」
ストレートな勧誘に神通さんは面食らっていたが、女子を二人連れてきてくれて、僕らは無事にグループとなった。去年からの友人であるらしい二人はおそらく、小林くんの熱烈すぎる言葉に怯んだ神通さんの隠れ蓑のような役割らしく、道中、小林くんが近づこうとすると、神通さんは嫌味なくふわーっと離れて二人の間に入り込み、話をしていた。必然的に、残された小林くんと僕らも、男三人で固まることになる。
「小林くん、避けられてると思うんだけど」
僕が指摘すると、小林くんはニヤリと笑って見せた。
「いや、悪くないよ」
その自信はどこから来ているんだ、と呆れる。
「だって今明確に、神通さんは俺を意識してるだろ。ちょっと照れて赤くなってもいる。よほど変なやつじゃなかったら、大抵の人は好かれれば嬉しいものだよ」
君は変な奴に入ると思うけど、という言葉は飲み込んだ。
小林くんは再び神通さんに近づき、今度は明確に話しかけた。
「神通さん。ちょっと話そうよ」
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