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意味がわからず、つい間抜けな声が出る。彼は僕の姿なんか見えていないかのように、両手の拳を握るとググと力を込めて悔しがった。
「これだから……これだから、生まれつき恵まれてるやつは!」
僕の中の危険センサーがにわかに点滅し始めた。もしかして、ハズレな席だっただろうか――
面食らっている僕を置いてきぼりにして、彼はギロリとこちらを睨んでくる。
「白川くん……、俺の去年のあだ名を知っているか?」
あだ名なんて知っていたら、とっくに君のことも知ってるよ、と思うが、返せたのは短い一言だけだった。
「しら、ない」
「二号だ」
「に、号?」
「そうだ」
そう言った横顔は哀愁が漂っていた。
「なぜか分かるか? これはそんなに難しい問題じゃない。ただ、クラスに『小林』が二人いた……それだけのことなんだ」
「はあ」
「それだけで! まるで愛人のようなあだ名になる!」
確かにちょっと可哀想かも、と思いつつも、その勢いに圧倒されて僕は仰け反るしかできなかった。
「いいか……? 今から重要なことを言うから聞いてくれ。名字にはカーストがある」
「か、カーストって、大げさだなあ」
無理やり笑おうとしたらへにゃりとした変な笑顔になった。
「変な風に笑うな、気持ち悪いぞ」
あ。この人、失礼な人だ。僕は少し憮然とした。
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