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「う、うるさいな。いきなり「よろしく」よりも前に変な話を始めたのはそっちだろ。カーストとかなんとか、そんなの被害妄想だってば」
精一杯の僕の反論で、この話題は終了するはずだった。これを言い切ったら席に座り、横を向くか後ろを向くかして、違う人と話すんだ……。そんな僕の決意はすぐに聞こえた別の声で上書きされた。
「いや、全く大げさじゃないよな。よく分かる」
低くいい声だった。僕は声のした方をゆっくり振り返り、眼鏡のガタイのいい男子を目に止めると、高速で黒板の方へ首を回した。
事もあろうに、僕の後ろの席に書かれた名前は、『鈴木』だったのである。
鈴木くんの登場により、小林くんは水を得た魚のように顔を輝かせた。
「鈴木くんじゃないか! わかってくれるだろ、君なら」
「めっちゃ分かる」
鈴木くんのせっかくのいい声は台無しだ。小林くんは体全体で喜びを表して拳を突き上げ、通りがかった女の子にぶつかった。
「わっ」
悲鳴に気づくとすくっと立ち上がり、女子にぺこりと頭を下げる。
「悪い!」
謝られた女子はその動作に再度びっくりして、「いや、いいけど」とそそくさと立ち去った。僕がぽかんとして見ていると、小林くんと鈴木くんは意気投合して喋り始める。
「小林は二号だったんだ。俺は「男」だったよ」
「なるほどそっちもあるよな……!」
「男?」
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