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つい疑問を口にすると、小林くんが手元の紙に何やらささっと書き込み、ずいとこちらに見せてきた。
「これだ」
『鈴木(男)』
「クラスに男女両方がいるとなるやつだ」
「はあ……」
確かに見たことはなくもない。
「これを見るときの悲しさが分かるか?」
わからない、と言うよりも早く小林くんが続けた。
「いや、君には分からないよ。これは重複しうる数の多い名字ならではの悩みなんだ。毎回区別させるために画数の多い補足を書かせてすまない……と思う上に、この字面のダサさも悲しい」
「分かるわー」
鈴木くんはうんうんと頷いた。
「まあ……、書くのはちょっと面倒だよね」
「そうだろ? 当事者である俺たちも、呼ばれたりすると同時に振り返ったりして面倒なのに、「なんでこいつら二人いるんだよ面倒だな」と先方にも思わせているんだ」
「先方って、堅いなあ」
「メールなんかも悲劇が起きる。しょっちゅう間違いメールが届くんだ。去年俺なんか、遊びで呼び出されて駅前に向かったら、お前じゃないって言われたんだぞ」
それは……ちょっと可哀想かもしれない。
「大変だね」
僕はもう同意することにした。
「どうりで、全然話したことのない女子から誘われたと思ったんだ」
「いやそれは小林くんが気付こうよ」
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