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これまでの十名程度が部活や委員会、好きな食べ物などを語る中、人生の目標を語った人は初めてだった。その上、その中身が意味不明。クラスはしんとなり、その一瞬の隙に全員が空気を共有した。
ここはスルーだ。
ぱん、という最初の音に続いて、ぱらぱらと拍手が起き、次の小宮さんへとバトンが渡された。小宮さんは戸惑いながら立ち上がる。さぞやりづらかろう。当の小林くんは謎のしたり顔を見せていた。後ろの鈴木くんがトントンと肩を叩いてくる。小さく振り返ると、前に頭を寄せてきた鈴木くんに、
「あいつ、変なやつだな」
と囁かれた。同じ悩みを理解していても、鈴木くんにもそう映るらしい。僕は自分が常識人であることを思い出すとホッと胸をなでおろした。
「だよね」
同意して首を元に戻すと、ちょうど自分の番が回って来る。がた、と椅子を後ろに押し出しながら立ち上がった。
「白川拓真です。部活は天文部です」
軽くお辞儀して座る。後ろの鈴木くんも「バドミントン部です」という無難な挨拶だった。
ホームルームが終わると、僕は小林くんに質問した。茨の道かも……という思いもよぎりつつ、どうせ数ヶ月は席が変わらないのだから、いつか気になって聞いてしまう気がしたのだ。
「小林くん、名字変えるっってどうするの?」
小林くんは一気に難しい顔をした。
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