名字カースト戦争

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「そこなんだ。残念ながら僕は男子だ。女子ならば結婚という形ですぐにでも変えられただろうけど、そこが難しい。でも、そのことを家でブツブツ言っていたら、姉から金言を得た」 「というと」 「婿になる」 「む、婿!?」  驚いた声を出したのは鈴木君だった。高校生活でなかなか聞く言葉じゃない。 「そうだ、だから僕は、彼女を作ることにした。理想的な名字の彼女だ」  僕は質問が全く思い浮かばなくて口をぱくぱくとさせた。 「い、いきなり普通な目標だね!?」  出てきた言葉はまたもツッコミだった。おかしい、僕は別に普段ツッコミ役ではないのだ。  別に褒めてはいないのに、小林くんはにやりと得意げにした。 「そうだ、ハードルは高すぎないように設定して、順にクリアしていくほうがいい」  その日から、小林くんの彼女候補を探す日々が始まったのだった。 ***  昼休みに机を合わせてお弁当を食べながら、僕たちは作戦会議をした。僕はもっと他の友達も作りたかったが、気づけば小林くんに呼ばれる毎日になっていた。 「なんだって僕を誘うんだよ!」  ちょっと抵抗してみたが、彼はまっすぐな目でこう言った。 「白川は、尊敬する名字だから友達になろう。俺の理想だ」  意味がわからないが不覚にも少し嬉しくなってしまったのだった。     
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