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応えた鈴木くんは驚きの適応力を見せていて、僕みたいに突っ込んだりしなくなっていた。曰く、「変なのは俺じゃないからどうでもいい」らしい。こういう人になりたかった気がする。
「そこで……まず却下するのは『小林』『鈴木』『山田』『田中』の四つだ」
「妥当だな」
「やっぱりそのあたりはダメなんだ?」
小林くんは呆れ顔で僕を睨んだ。
「白川くんが今「やっぱり」「あたり」と言ったのが理由の全てだよ。全日本人にとって、この四つは将棋の「歩」みたいな存在だ。かっこよくないだけじゃなく、数が多い。数が多いと、始業式の日に言ったような悲劇が起きる」
「一号二号とか、男女ってやつ?」
「そうだ」
よくできました、と言わんばかりに深く頷く。
「よって大変申し訳ないが、いかに素敵な女子でもこれらは却下だ」
相手にとって『小林』が却下ってことはないの? という思いがちらつくが、婿になるのだから関係ないかと思い直した。
「だいたい、なんでかっこ悪い名字が多いのか疑問だよな。もっと、『榛名』とか、『結城』、『綾野』みたいな名字が増えれば、こっちは希少価値くらいは保てたかもしれないのに」
「まったくだよな」
鈴木くんは適当に同意した。
「多いといえば、『佐藤』や『高橋』はいいの? さっきの四つに入ってなかったけど」
僕が素朴な疑問をぶつけると、小林くんはため息をついた。
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