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富田さんが転んだ
「富田さんが転んで、怪我したらしいよ。」
と、同僚の英子が言った。
「配送センターの富田さんだよね?」
私は、昼食の手を止めて聞いた。
「そう、富田さん。配送センターの・・・。」
「怪我は、酷いの?」
「そこは、よく分からないけど、転び方が凄かったって、父さんが言ってた。」
英子の父親は、その配送センターから配送を請け負っている契約会社の社長だった。社長といっても、従業員はたった3名。合計4名で、2班に別れ、2台のトラックで配送を行っていた。
私が働いているホームセンターでは、大型商品の配達はもちろん、様々な工事の依頼が多い。それらをまとめて管理しているのが配送センターで、地方だと、3店舗から5店舗に一つの割合で、配送センターがある。
私の暮らす町には、ホームセンターはあったが、配送センターは無かった。だから、配送センターの富田さんの名前だけは知っていたが、実際に会ったことは無かった。もちろん、他のメンバーにも会ったことが無い。時々、こうやって、英子から話が漏れてくるので、なんとなく雰囲気が分かる程度である。恐らく、名前すら知らない人もいると思う。
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