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「そうそう、配送センターは辞めたけど、その健二。」
「えっ、健二さん、辞めたんですか?」
「少し前に辞めて、東京に行くとか言ってたんだけど、まだ、こっちに居たんだな。」
城崎さんは、急いでいたようで、慌しく出て行った。
その日のニュースで、町はずれの雑木林から若い女性の他殺体が見付かったと報じられ、久々の殺人事件に小さな町がどよめき立った。町中の至る場所で、その女性の身元等について噂された。
飲み屋さんで働いていた人だとか、どこどこのアパートに住んでるとか、身体中傷だらけだったとか、今年雪が少なくて発見が早かったなど、うちのホームセンターのパートのおばさん達の会話だけでも、かなり関心を集めていた。しかし、自分達に関係なければ話も尽きる。5日もすると忘れ去られ、次の話題へと移っていった。
ホームセンターでは、季節の移り変わりに敏感で、一足早い売場作りをしなければならない。暖房用品のコーナーを少しずつ縮小し、やがて訪れる春のアイテムを徐々に増やしていく。
新社会人、新入学など、一人暮らし用の家電や家具なども、そのアイテムの一つである。
事務所で発注書をまとめていると、電話が鳴った。出ると、クレームのようで、
「配達された商品の色が違う。」
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