富田さんが転んだ

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昼休憩が終わり、配送センターに電話すると、富田さんが出た。 「配送センター、富田です。」 「あれっ、富田さん、怪我は大丈夫なんですか?」 ちょっと間をおいて、 「あっ、はい。つまずいただけですから、大したことないです。」 声の調子から、気まずそうに答えたのが分かり、私は用件だけ伝えて電話を切った。 今頃、不思議に思っているに違いない。 (なぜ、転んだ事を知っているのだろう)と。 「うふふっ。」 思わず、笑ってしまった。 噂話が、どこからどう広まるかなんて計り知れない。そればかりか、色々と尾ひれが付いて、変形していくものである。 翌日の昼も、また英子の話が面白い。 「配送センターの健二さんに女の人が訪ねてきて、口論してたんだって。」 健二さんは、英子の話だと、イケメンで女にだらしないらしい。 恐らくは、英子の父親の見立てだろうとは思うが、 「男は顔じゃない。健二みたいなやつに騙されるなよ。」 と何度も言われ、英子もうんざりしているようだった。しかし、 「バレた。やばい。なんとかして。」 と、女が大声で叫んでいたそうだ。それが、かなり危機迫る感じで、健二さんもかなり慌てていたということだった。     
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