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配送センターでは、状況が不自然だったため、家族の方と共に警察に届け出たらしい。捜査の為、配送センターに警察の人が来て、色々と調べていったと英子が得意気に話していた。英子の父親も警察の人から話を聴かれたそうだ。しかし、何も答えられることは無かったらしい。
「健二ならともかく、富田さんは真面目だったから、トラブルなんて何も無かったからね。」
と英子の父親が言っていたそうだ。
そのまま、この話はいつしか、忘れられていった。
それから約1ヶ月後、またもや英子からこんな話を聞かされた。
「配送センターに富田さんの幽霊が出るんだって。」
「あの失踪した富田さん?」
「そうそう、あの富田さん。だからみんな、富田さんは死んでいるんじゃないか、と話してるって。」
急にまた、あの日の事が、思い出された。そして、あの時の罪悪感にも似た後味の悪い感情が、再び私の脳裏をよぎる。
なぜ、罪悪感なのか、自分にも分からないが、心の中のもやは晴れなかった。
私は、思い切って、隣の町にある配送センターを訪ねた。同じ会社の社員同士だし、たまたま近くに用事があったので、差し入れを持ってきましたといった感じで。
車から降りて見渡すと、広い敷地に平屋の事務所と大きな倉庫があった。
配送や工事担当の契約業者のトラックやバンが数台停まっていて、商品の積み込み作業などを行っていた。
私は、その中に一人、知っている顔を見付けた。
「城崎さん。」
近付いて声を掛けた。
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