富田さんが転んだ

9/13
前へ
/13ページ
次へ
帰り道、一人きりの車中、富田さんの姿が何度も思い出されて怖くて仕方なかった。 (そう言えば、噂通り富田さんは、ずぶ濡れだったような気がする。) 時刻は、16:30 夕闇が迫ってきている。冬は、暗くなるのが早い。だから、皆急いで帰ろうとする。暗闇に取り残されないように。 今年の冬は、雪が少ない。国道沿いも、田畑は雪で真っ白だったが、車道には、まったく雪がなかった。 (富田さんは、何処にいるのだろう・・・。) それからしばらくして、私が、ホームセンターの売場で品出しをしていると、後ろから声を掛けられた。 「高橋さん。」 「あっ、はい。」 振り向くと、そこに城崎さんが立っていた。 「城崎さん!」 「大丈夫そうだね。この前、様子が変だったから、心配してたんだよ。」 「大丈夫ですよ。工事ですか?」 「ああ、材料が足りなくなって、部材買いに来たんだ。」 「寒いのに、外で工事大変だね。」 「でも、今年は、雪が少なくて助かってる。去年なんか、雪のせいで工事出来ない日が、いっぱいあったもの。」 「車、気を付けて下さいね。」 「ありがとう。そう言えば、さっきここの警察署から健二が出て来たんだけど、あいつ何かしたのか?」 「健二?もしかして、配送センターの健二さんのこと?」     
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加