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パックの話
「ほら、ここに食糧があるじゃん」
彼は箱を指して、そんなことを言った。
「ああ、見てみたらいいじゃん」
箱を開ける。
「うん、どうやら、保存食らしいよ」
彼女は紙でできた大きな箱を壊す。銀の袋に包まれたそれは、水分を中に入れない構造をしているらしい。以前、食べ物をこの袋から出して、放置していたら、食べ物は腐っていった。それで、僕は、そう思った。
食べ物だと思われるものは、大抵、その中に入っているので、銀色の袋を見れば、中身は食べ物だということが分かる。
「食べるか?」
「まあ、少しは」
彼女は、時計をつけた右手にパックの食糧を掴み、開ける。
「なんか、前のと違って、黒っぽい」
「これ、"チョコレイト"ってやつっぽい」
「流石、文字読めるだけあって、よく知ってるね」
たわいもない会話を続ける。
「それで、その"チョコレイト"食べられるの?」
「勿論、本に、そう書いてあった」
「そうなんだ」
彼も、パックを開ける。
「袋に、"チョコレイト"って書いてある」
「他には、何が書いてある?」
「賞味期限って書いてある」
「そう言えば、前にも、そんなのが書いてあったよね」
「うん、意味は、分からないけど」
「ふうん」
そして、彼は、その食べ物を口にする。名前こそ知らないけれど、でも、食べ物だと分かっている以上、彼らはそれを口にする。
「甘っ!」
彼は、驚きの言葉を発する。
「確かに、甘いね。久々に食べたよ、こういう味のやつ」
「そうだね、昔、住んでいたところ以来かも」
「確かにね」
彼らは甘いと言いつつ、淡々と食事を済ます。
「他の人がいるところ、見つけられたらいいね」
彼が呟いている間、彼女は、淡々と別の箱を開け、何個かパックを掴み、リュックに入れた。
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