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「そういうわけのわからないこと、するのも言うのも、やめてくれよ」
「わけがわからないものじゃないです。みー君が理解できないだけですぅ」
ムゥは口を尖らせた。
「ああ、お前は説明してくれたよな。ここは俺の頭の中なんだろ。……それじゃ何の説明にもなってないがな。なんでもいいから、俺の頭の中に勝手にソファを置いたり! ポテチ食ったり! しないでくれ!」
俺がどんなに同情を誘う悲痛な叫び声をあげても、ムゥはえへ、と笑うばかりだ。
辺りは一面真っ白の、現実世界ではありえない異空間。
ムゥが言うにはここは俺の脳内に作った仮想空間で、こいつと俺がコミュニケーションするための幻覚みたいなものだと説明された。
だが、そのことについては俺はよく理解できていないし、詳しいことを言うことはできない。
ムゥの言うとおりだった。俺には少なくとも今の段階では理解できない。
これから先に分かることかもしれないし、あるいは一生理解できないかもしれない。
だがしかし、一つ知ったことがある。
俺がついさっき知った事実。
それはことの発端は俺の授業中の居眠りだった、というあまりにくだらなくて信じがたい事実。
その居眠りのせいでこのムゥという名前の金髪少女が俺の頭に住み着くようになった。
たった一度の居眠りが原因で、俺は頭や腹や足から血を流し、天使や悪魔に遭遇し、周囲からは狂人変人扱いを受けた。
後悔を超えて諦めが勝る。
そうとも、“きっかけ”は授業中の昼寝だったはずだ。
――これで始まりは決まった。
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