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少年
「嘘だよ」
オオカミ少年は優しく微笑む。
「やっぱりな……」
正直者ばかりの村は、いつまでも騒いでいた。
────────
「始めましてぇ」
私達の村に引っ越してきた少年は、けだるげにお辞儀した。少年には両親がなく、一人で暮らすために村にやって来たらしい。
少年の家は私の家の隣だった。
「こんにちはー」
一人暮らしの少年と少しでも仲良くなりたかった私は、初日からジャムを持って隣の家の戸を叩いた。
開いたドアから覗いた少年は私を迎え入れた。
「あ、ありがとうございます……」
「あ、私、同い年くらいでしょ。気遣わなくていいんだよ?」
「うん……」
ジャムを渡した後もしばらく談笑していた。
少年はこんな話をしてくれた。
「有名な童話なんだけどね…?
ある男の子はとっても嘘つきだったんだ。その男の子は羊飼いの息子だったんだけど、暇すぎて騒ぎを起こしたんだ。
『オオカミが来た!このままだと羊が全部食べられちゃう!』
ってね。周りの大人は慌てて武器を持ってオオカミを撃退しに行ったんだ。でも、オオカミなんて本当はいない。
全部、男の子の嘘だったからね。
それが面白くって何回も繰り返してたら、誰も男の子のことを信じなくなったんだ。だから、本当にオオカミが来た時、大人達は何もしなかった。
だから羊はみんな死んだんだ。
ねぇ、この話、君はどう思う?
悪いのはオオカミ少年?それとも……
大人?」
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