永遠の冬の朝

1/3
前へ
/3ページ
次へ

永遠の冬の朝

Bの独白: おはようございます、お嬢様。 ……ああ、ここはいつも変わらず、いつまでも本当に美しい。 この、澄んだ冬の朝の空気も、空中にとどまる雪のきらめきも、鳩たちの白い翼も、そして……お嬢様の、寒さに負けずに咲いた大輪の花のようなその笑顔も。 いっそ全てをこのままにして、ここでいつまでも眺めていたいとすら思いました。何度も、何度も。 でも……やはり、ボクは祖父のあやまちを償わなければなりません。それができるのは、ボクだけなのですから。 思えばボクは、お嬢様にも、大旦那様にも、まだ何のご恩返しもしていません。 祖父とボクが飢え死にせずに済んだのは、大旦那様のおかげだったのに。 発明家の祖父は世の中からはさんざんインチキ呼ばわりされていたけれど、ボクは信じていたし、誇りに思っていました。 大旦那様に助けられて、その祖父は安心して研究を続けることができたし、ボクも学校へ通わせていただいた。 それに奥様もお優しく、お嬢様も、本当に仲良くしてくださって……今思えば、夢のような幸せな毎日でした。 でも……祖父は、いいえ、ボクたちはその恩を仇で返すようなことをしてしまいました。 幾ら悔やんでも悔やみきれません。どうか、お許しください…… 祖父は、『水陸両用車』の研究を行っているはずでしたが……実際に開発していたのは、禁忌である『時間遡行機械』でした。 それが、あの大事故を起こして…… 時間を、『あの日の朝』のまま、凍りつかせてしまったのです。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加