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見つけた原石
その日の放課後からピアノレッスン室は、やる気をみなぎらせた新入生によってほぼ満室になっていた。
細長い通路。両側に所狭しと扉があり、01Aから20Dまでの数字が扉のネームプレートに記されている。Aから始まりDまで20室ずつなので、80部屋あることになる。他の持ち運び可能な楽器の生徒は各自好きなところで練習していた。
空いている部屋を探しながら、西野は酸っぱい顔をして歩いていた。
ーーどいつもこいつも、汚い音出しやがって。ああ、頭痛い。
寮の部屋にピアノがあればいいのに。そう思った。このレッスン棟の部屋には防音設備はなされているものの、どうしても音が溢れてくる。
足早に歩いていた西野。だが突然、後ろからまるで引っ張られるかのように、その足が止まる。
「え……?」
驚きに目を見開いて、彼は振り返った。
そして急いで来たばかりの方へ戻る。左右のドアに付いた小窓を覗きながら、慌てて行ったり来たりを繰り返す。
ーー今、すごくきれいな音が聞こえた。どこだ!?
譜面とにらめっこしているしかめっ面の男。
自分の音に酔いしれるように弾く自惚れ女。
なぜかイヤホンをして眠っている訳分からない男。
鍵盤から出てくる小さな音をヒタヒタと食うように弾く妖怪男。
どれも違う。どこから出てきた音なんだ、と、西野は執拗に探したが、遂に音の出所は分からなかった。
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