3人が本棚に入れています
本棚に追加
「遅い!」
玄関先で仁王立ちして待っていた、飼い主のケイ。けろっとした表情で帰宅したチャーコを見て、ほっと胸をなで下ろす。
「ちょっと迷子の人と話し込んでいたプギ」
「あっ? 変質者じゃねーだろうな」
「大丈夫ぷぎゅ」
怪しくなかったと言えば嘘になる。道を聞かれただけで身の危険はなかったわけで、報告するまでもないとはぐらかした。
「今度また遅くなったら、GPS首輪つけるからな!」
「……ごめんなさいプギ」
苛立つケイの背中に小さな謝罪を述べるが、冷えた食卓に会話はなかった。
翌日。ケイが出勤した後、チャーコは紙切れの地図を頼りに昨日の怪しい奴を探しに出かけた。決して、おやつに釣られたからではない。
「いらっしゃいわん」
「こんにちわプギ」
知らなかったのが不思議なほど大きな古民家の長い石畳を通り、チャイムの壊れた玄関から叫ぶと、昨日と同じく目深にキャップとフードを被った怪しい雰囲気を纏った奴が、口角を上げ出迎えた。印象的な黄色い手袋はチャーコを招き入れると、引き戸を閉めた。
「土産もねーのかよ。つかえねー奴」
逆光で気づかなかったが、口の悪い鳥は色鮮やかな青い鳥だった。
最初のコメントを投稿しよう!