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雪はいよいよ街を埋め尽くしそうで、近くに人影は一つもない。
直接「公園」に行くのは久しぶりだ。
石像の猫が壊されなければ、世界征服目前の雪の中へ出てきたりはしなかっただろう。
今や「公園」に子どもはいない。
絶望し疲れ果てた大人ばかりで、無害な石像に当たる程度には、まともじゃない。
なのに人の形をしたものには手を出さないあたり、生に未練がありそうだ。
もう石像を作り直すのは難しい。空っぽの手に、何を抱かせてやろう。
彼女ばかりがこの世の悪意の犠牲になっているようで、何か一つでも報いてやりたい。
しかし何も考えつかずに、雪を纏う彼女のすぐ後ろまで来てーーほわほわと上る湯気に、驚かされたのだ。
石像の手に、湯気の立つ大きなホットドッグ。
誰が?
稀に配られる工場産のパンとは、大きさがまるで違う。
パン屋はとっくに閉店して、窯だけが開放されている。材料はわずかな配給分しかない。
それなのに。
わざわざ焼いた貴重なパンに、ちゃんと具材まで挟んで、温かいうちにーー石像の、ために。
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