14人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女に向けられる善意が、あった。
分かるのはそれだけ。
それだけでも、冷たくなった彼女にあたたかいものが吹き込まれた気がしてーー俺は失われたはずの、色彩を見た。
猫と風に遊ばれ揺れる髪の色。寒風に擦られて火照ったような頬の色、それとよく似た輝く目の色。
凍てつく世界で、ぬくもり溢れ、生き生きとしていた彼女の姿を見た。
思わず、呟いていた。
B「ありがとう」
見知らぬ誰かに。彼女に。一応、世界に。
こう心から言い残せることが、嬉しくて仕方なかった。
最初のコメントを投稿しよう!