白息の正体

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彼女に向けられる善意が、あった。 分かるのはそれだけ。 それだけでも、冷たくなった彼女にあたたかいものが吹き込まれた気がしてーー俺は失われたはずの、色彩を見た。 猫と風に遊ばれ揺れる髪の色。寒風に擦られて火照ったような頬の色、それとよく似た輝く目の色。 凍てつく世界で、ぬくもり溢れ、生き生きとしていた彼女の姿を見た。 思わず、呟いていた。 B「ありがとう」 見知らぬ誰かに。彼女に。一応、世界に。 こう心から言い残せることが、嬉しくて仕方なかった。
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