くそ野郎

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 ざりざりする廊下に、薄暗く冷えきったリビング。カーテンを開けることもなかったから、暗くてホコリも気にしてなかったが、掃除なんてどんくらいしてないんだ? 蛍光灯じゃあ、いまいち見えねんだよ。  それにしても、さすがにやべえな。この冬の真っ只中に電気止めるかねえ? 俺に死ねってか? 温情もへったくれもありゃしねえ。風呂も入れねえじゃねえか。たしか入ったのは五日前か? この良く言えば古民家。悪く言やあボロ家には俺一人。いくら臭くても誰も気にしねえけど、外に出るときくらいはちゃんと風呂に入るエチケットくらいはある。  しかし、仕事辞めて初めて気がついた。俺がいかに誰にも求められてないかって。誰からも連絡の一つねえ。まあ、携帯も先月止められたから関係ねえけど。  いや、それより問題なのは、アイツに餌をやれねえことだ。また夕方に窓カリカリして入れろアピールしてくるに決まってる。アイツの餌も今日で底をついちまう。携帯止められっちまったから、通販もできねえ。そもそも買いだめできる金もねえ。  アイツとの付き合いはもう二年になるか。まあ、どっかの飼い猫だろうが、アイツと俺は親友だ。猫の気持ちなんざわかんねえけど、きっと親友のはずだ。  しょうがねえなあ。覚悟決めて水風呂入って、アイツの餌と俺の飯でも買ってくるか。
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