くそ野郎

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 もう家の温度はどこにいても一緒だ。風呂場も寒々してやがる。これじゃあ、温度差でおきるヒートなんちゃらも関係ねえな。  さて、心頭滅却すればだ。水のシャワーよ、かかってこい!   うっひゃー! 死ぬってこれ! 痛てえよ! さっさとボディーソープで洗っちまおう。おい、おい、こんな冷てえ水でもちゃんと泡立つなんざ、気が利いてるねえ。  よっしゃあ! 次はシャンプーだ! なんだよ、こっちは気が利かねえなあ。さっぱり泡立たねえよ。  それにしても、段々慣れてきたなあ。水が温かく感じてきやがった。ランナーズハイじゃなくて、シャワーズハイってか。  ついでに歯磨きと髭も剃って、はい、出来上がりっと。  いつから使ってるか忘れたタオルで身体拭いて、さっさとスーパーへレッツゴー! 「すみませーん!」  何だ? 女の声がする。 「すみませーん! どなたかいらっしゃいませんかー!」  わかった。今度はガスだな。電気も止まるんだから当たり前か。払えって言われても、ねえもんはねえよ。  一応言い訳に出るか。どうせ表出るつもりだったしな。 「はい! 少し待ってください!」  その前に服着ねえとな。部屋行って、ジーンズとトレーナーでも着てくるか。  それにしても、家の中なのに息が白いってどういうことだよ。全くやんなるぜ。 「はい、はい、お待たせしましたね」  ガラッと引き戸を開けてビックリ。やけに綺麗な姉さんが、アイツを抱えて立ってやがる。 「突然にすみません。この子がいつもお世話になってるみたいなので、お礼に伺いました」  チャトラのアイツは俺と目が合って、呑気に「にゃあー」なんて鳴きやがる。 「え、えーっと、飼い主さんですか?」 「はい。あ、すみません。申し遅れました。二ノ宮と申します」  おい。お前は今まで、こんな綺麗な飼い主いるなんて言ったことなかったよな。てっきり、どっかの婆さんでも飼ってんだと思ってたのに。 「あ、内藤です。いつもお世話になってます」  俺の一言に、二ノ宮さんは大笑いだ。 「お世話になってるのは、この子ですよ。内藤さん面白いですね」  
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